降圧剤は要注意!安易な服用は命の危険?脳梗塞、認知症、意識障害の恐れも

数多くのジェネリック降圧剤が発売され、たくさんの高血圧患者が服用するのは、脳出血を恐れている人が多いことの表れだと思います


 しかし、降圧剤を飲んでいても、脳出血の一つである脳梗塞が起きてしまうことがあります。脳出血を防ぐために血圧の薬を飲んでいるのに、なぜ脳梗塞が起きてしまうのでしょうか。

 脳梗塞は、脳の血管に血栓が詰まり、その先の組織に酸素や栄養が行かなくなることで、さまざまな障害が生じる病気です。酸素や栄養が届かずに壊死した組織が軟らかくなるため、一昔前は脳軟化症と呼ばれていました。

 1960年代には、脳梗塞は脳卒中全体の13%程度でしたが、食生活の欧米化などにより増え続け、現在は84%を占めるまで増えています。

 脳の血管に血栓ができること自体は珍しくなく、これが即、脳梗塞につながるわけではありません。血栓ができても、人の体は血を送り出す圧力を高めて血栓を押し流してしまうからです。血栓ができると血圧が高くなるのは、そのためです。

 しかし、降圧剤で無理に血圧を下げてしまうと、血栓を押し流せなくなってしまいます。そうなると血栓が居座って肥大し、血管を完全に詰まらせてしまいます。その結果、脳梗塞が起こりやすくなるのです。

 お酒をよく飲む人は、意識障害のリスクもあります。アルコールが体内に入ると血圧が低くなりますが、降圧剤を服用していると相乗効果が生じ、血圧が下がりすぎることがあるからです。家の中でなら、ふらついてもさほど問題は起きませんが、冬場に公園のベンチなどで寝てしまったら大きな事故につながりかねません。

 また、入浴時の溺死にも注意が必要です。温かい湯船に入れば、まずは一気に血圧が上がりますが、そのあとはどんどん下がってくるのです。血圧が下がると居眠りをしがちですが、特に降圧剤を服用している人は下がりすぎて意識障害が起きやすくなります。あまり知られていませんが、日本で入浴中に死亡する人は年間約2万人もいるのです。これは、日本における交通事故死の約5倍の数字なので、浴室での意識障害を甘く見ることはできないのです。

 さらに高齢者の場合、降圧剤の影響で脳の血の巡りが悪くなるために、脳内に酸素や栄養が行き渡らないので脳の活動が阻害され、脳血管性の認知症になる可能性もあります。

 このように降圧剤は、血圧の下がりすぎによるリスクもあるので、医師に勧められたからといって、深く考えもせずに飲み始めるのは考えものです。

 要注意なのは、「ちょっと血圧が高めなので、降圧剤を飲んだほうがいいでしょう。弱いお薬なので、安心して服用できます」といった医師のセリフです。

 血圧が高くなった原因に心当たりはないか、本当に薬の服用が必要か、薬以外の方法で血圧を安定させることはできないか、ご自身でよく考えてください。決断するのはあなた自身です。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

●宇多川久美子 薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)など著書多数。